2013/08/09

パリを悩ませる不穏な空気

「ぬかるみ」を思わせるような困難な経済状況の中、
フランスで最も耐え忍んでいるといえる分野の1つは観光産業である。
世界で最も観光客の多いこの国には、毎年8000万人もの人々が興味を抱いて訪れ、地域経済を活性化させる。勿論、パリは依然として世界の旅行者の人気スポットであり、80%の稼働率を誇るホテル部門の数字がそれを物語っている。

治安悪化で観光業への悪影響も治安悪化で観光業への悪影響も

ところが今、専門家たちが指摘するのはむしろ先行きへの不安、警戒感だ。
『フランスの観光業は今、深刻な状況にある』と。
観光客がフランスに魅力を感じなくなったわけではない。理由は『治安の悪化』である。

国外の人々に悪印象を与えるこの問題は、特に首都・パリで悩ましい状況にある。
犯罪統計当局によると、ここ数年連続で、着実に個人への犯罪の数は増加しているという。

この4月には治安の悪化を背景として、ルーブル美術館のスタッフらがストライキを決行した。観光客を襲うスリ集団、暴力的ムードの蔓延を告発するのが目的だったといい、結果、特定の犯罪行為や館内の規則を繰り返し破る者を入場拒否する事に決めた。

スリ横行でストを決行したルーブルスリ横行でストを決行したルーブル

またLVMH(ルイヴィトンモエヘネシー)、Dior、CHANELといった75の高級ブランドが加盟する団体・コルベール委員会は、『治安の悪いパリ』というイメージが海外の富裕層や顧客に広まる事を懸念し、声高に警鐘を鳴らし始めている。
「我々は、加盟するブランドの顧客などのネットワークからフィードバックを得ているが、既に彼らは、パリが全くもって安全でないという評価を下している」

高級ブランドに限ることなく、観光客による売り上げはパリの重要な収入源である。
だが最近では、新興国でも中産階級の人々の観光が発達し、『治安の悪さ』などという評判は、彼らの間にもあっという間に広く知れ渡る。
フランス政府がこの状況を深刻に受け止めるに至った理由も、ルーブルでの事例やパリ市が春に実施した調査だけでなく、観光客増加率が毎年20%を誇る中国の当局が、フランス側に対応を繰り返し要求したことがあったようだ。

警察本部によると、スリの主なターゲットは中国人、韓国人、そして日本人だという。
理由は大きな現金を持ち歩いているだろうというイメージ。
実際、背中に背負った鞄から、札束やパソコンがはみ出していた事もあったそうだ。
ちなみに日本人観光客について言えば、2012年は円高も大きく寄与したとみられ7.4%の増加。またパスポートの入国印に基づくならフランスへの観光客は55万人と中国人の20万人に対して2倍以上の数なのだという。

主要な観光地では警備を増員主要な観光地では警備を増員

最近パリでは、特に観光客が押し寄せるエッフェル塔やノートルダム寺院、シャンゼリゼ大通りといった場所に、巡回警察官が200人ほど増員された。
加えて「パリは安全です」などと数ヶ国語で書かれた広告の類も出される見通しである。
またルーブルでは4月の警察官の増員以来、苦情が70%減少したという。

とはいえルーブル美術館は142ある美術館のうちの1つに過ぎず、パリには1549のホテル、17500のカフェ、年間30億人ものメトロ利用者がいる。
多くの専門家からは依然、対応不足だとして非難の声があがっている。

国家警察によるとパリでは憲兵隊が過去12ヵ月で18.8%増加した一方で、
5月には財産を狙った犯罪が10.8%の増加(うち7.2%暴力を含む)となった。
治安の悪化は思い込みやイメージではなく現実的な脅威で、対応は急を要するのだ。
観光業こそが成長と雇用再生に必要とされる今、治安対策はまさに喫緊の課題、
ニューヨークが10年前にしてみせたように、治安を守るこの戦いに勝たねばならない。
観光客がパリの状況に合わせてくれるなどあり得ない。パリが旅行者たちの要求に応え、
ロンドンやローマといった別の観光地へと逃げ出すリスクに対応せねばならないのだ。

シャンハイ★Shanghai