2015/05/18

娘から知ったフランスの小学校事情

「行ってきます」。午前8時半、娘が通う自宅近くの公立小学校の前には、子どもを送りに来た親たちで賑わう。
私の娘(6歳)は、今、フランスの公立学校に通っている。
日本人は学校にただ1人。当初は言葉も分からず、自分とは肌の色が違う子どもたちに囲まれ、「もう日本に帰りたい」と大泣きしていた。
だが、今では、友達が出来、毎日の学校が楽しくて仕方ないらしい。子どもの成長は早い。

学校へ登校する娘(6歳)学校へ登校する娘(6歳)

フランスでは、学校の送り迎えは親の仕事である。
登校は午前8時半、下校は午後4時半。男女平等のフランスでは、多くの母親が仕事に就いていて、父親が送り迎えをするケースも少なくない。
そんな娘を通して、「へぇ〜」と思ったフランスの小学校、子ども事情をいくつか紹介したい。

■子どもの時から「バカンス文化」を体感
バカンス大国・フランス。「休み」を重視するこの文化は、子どもの時から養われる、と言っても過言ではない。
学校は日本と同じ3学期制だが、聞いたことのない休みがいくつも存在している。
春休み、夏休み、万聖節(カトリックの記念日に合わせた休み)、スキー休み、など休みは1年間で合わせておよそ16週間。
およそ7週間行くと、2週間の休み、というリズムで設定されているらしい。
また、フランスでは、学区をA,B,Cの3つに分け、休みの時期をずらしている。
これはバカンスにつきものの交通渋滞やスキー場での混雑を防ぐのが目的だという。
こうした子どもの時からしみついたリズムは、大人になっても続いていくのだ、と変に実感する。だが、すべてのフランス人が子どもの休みを歓迎しているわけではない。
同じくらいの子どもを持つ、あるフランス人の父親の話。


「子どもが休むたびに、親はどこかに連れ出さないといけない。学校でも職場でも、休み明けの話題は『バカンスはどこに行った?』ばかり。
正直、疲れる。たまには1人でバカンスを過ごしたい」。

家族との時間を大事にするフランスではこうした意見は少数派だが、確かに存在する。
子育ての大変さに、日本もフランスもそう大差はない。

■教室に残る「戦争の記憶」
フランスでは「授業参観」といった機会はほとんどない。
学校内は、先生たちにとっての「聖域」であり、親がそこに踏み込むことはそう多くないらしい。その代わり、親と保護者とが話し合う機会は用意されている。
ある面談の際、担任の先生からこんなことを言われた。
「娘さんはなぜ、質問する際、手のひらを広げるの?それは、ナチスのヒットラーを連想させるから、こちらでは使わないのよ」。

最初は先生が何を言っているか分からなかった。
だが、先生のしぐさを見て、ハッとした。
日本では、横断歩道を渡るときも、先生に質問するときにも、手のひらを広げ、指先を伸ばすのが「礼儀」だ。
しかし、フランスだけでなく、ヨーロッパでは、この手の形は第2次世界大戦中のナチスドイツを連想させることから、そのしぐさは「タブー」だという。
戦後70年が経ち、日本では戦争の記憶が薄れつつある中、ここヨーロッパでは、そうした歴史の断片が「教育」の場にも残っていることにかなり驚いた。

授業中と同じくバス停でバスを呼び止めるときもこのポーズ。決して手のひらは広げない授業中と同じくバス停でバスを
呼び止めるときもこのポーズ。
決して手のひらは広げない

■充実?フランスの学童保育
休みが多いフランスの小学校。水曜日は午前11時半までしか授業はないが、ほかの曜日は、午後3時半まで。
だが、親が希望すれば、午後4時半まで子どもは学校に預けることが出来る。
それを支えるのは「学童保育」の制度だ。
卓球、演劇、ビデオ鑑賞、図書館での読書、マジック、創作ダンス・・・ほとんどの曜日で、授業後に同じ校内で「学童保育」が用意されている。
共働きが多く、送り迎えも必須のフランスの親にとって、この制度はありがたい。
だが、その中身には少し疑問を感じることも・・・・

娘が通っていた「ビデオ鑑賞」という学童保育。
見学する機会があって、先日見に行った。
先生(担任とは違う)が子ども用のアニメを黒板に取り付けたプロジェクターの画面に映す。娘の話だと、アニメを見て、先生が子どもたちに質問するという授業らしいが、その時は、先生が疲れていたのか、1時間にわたりアニメ鑑賞のみで終わった。

また、別の日に行われていた創作ダンスの授業も見に行った。
子どもの想像力を伸ばすという目的らしいが・・・・
先生の指導はこんな感じだった。


「目の前に大きなボールが落ちているよ。それを拾って、友達に投げて!」
「大きなボールは1メートルほどの大きさよ、ああ、今、上から落ちてくる。逃げて〜」

現実にはボールはない。創作ダンス。そうイメージして、それを体現する授業だ。


先生の指導は続く。
「さぁ、あなたたちは猫よ。猫になりきって」
「今からはライオンよ、ライオン。吠えて!」

創作ダンスの授業を受ける娘(左側)この時は「海を泳ぐ」という課題で踊っていた創作ダンスの授業を受ける娘(左側)
この時は「海を泳ぐ」という課題で踊っていた

自分がこうしたダンスの分野に詳しくないからかもしれないが、見た目にはドラマや映画のオーディションで俳優に課せられる課題のように映り、6歳には理解が難しいのでは・・・と感じた。

授業後、娘に「どうだった?」と聞くと、「体を動かせて楽しかったよ」との答えが返ってきた。
すでに、娘の中にもフランスの文化が入り込んでいるのは・・・と嬉しいような、驚きのような、複雑な気持ちになった。
娘は、ビデオ鑑賞は辞めたが、この創作ダンスは今も続けている。

シャンハイ★Shanghai